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司法書士法人・行政書士事務所リーガル・ソリューションは、東京都新宿区にある司法書士・行政書士事務所です。

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借地権付き建物を相続した場合の手続き|名義変更料は必要?

更新日:2022-07-11
借地権の借主が死亡した場合の手続きは?
借地権を相続したので、建物の名義変更を検討している
借地に建つ家を相続したけど、初めての経験でどうすればいいかわからない    

この記事はそのような方向けに書いています。  

こんにちは、司法書士の樋口です。 

私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、相続、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。 

借地権付き建物を相続した場合には、借地権が登記されている場合と登記されていない場合とで手続きが異なります。

いずれの場合にも土地所有者(底地の所有者)には、相続が発生した事実をまずは伝えるのが無難でしょう。

なお相続による名義変更の場合には、借地権付き建物を売買する場合と異なり、地主に対し名義変更料は不要です。

この記事では、借地権の概要や借地権の登記がなされている場合となされていない場合の相続手続きについて、図解を交えて詳しく解説しています。

借地権を相続した方の参考になると思いますので、よろしければ最後までご覧ください。 

相続登記の全体について詳しく知りたい方は『相続登記とは?亡くなった人の不動産の名義変更について法改正点も含め解説』をご覧ください。

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借地権とは

住宅模型と本

借地権とは、土地の利用権のうち、建物の所有を目的として設定された地上権または土地の賃借権のことをいいます 

自分が所有していない土地の上に建物を建てるためには、その土地を使う権利を持っていることが必要で、これがなければ不法占有となってしまいます。 

土地所有権とそれ以外の土地利用権の比較

土地の利用権としては、地上権、賃借権、使用借権などがあります 

地上権  建物などの工作物や竹木を所有するために他人の土地を使用することができる権利 
賃借権  賃料を支払って他人の物を使用収益することができる権利 
使用借権  無償で、他人の物を使用収益することができる権利 

(スマホでは右にスクロールできます)

個人が自宅を建てるために地主から土地を借りる場合には、地上権ではなく、賃借権が設定されることが一般的です。  

また、親が所有する土地に子供が家を建て、無償で使用しているときは、特に契約書を交わしていなくても、使用借権があると考えられるケースが多いです。 

建物は、自宅としたり、事業を営んで生計を立てたりするために使用され、生活の基盤となることが少なくありません。 

そのため、建物を所有する目的で設定される地上権と土地賃借権については、借地権として、借地借家法によって借主の権利が特に保護されています。  

使用借権については、貸主と借主との間に特別な関係があることが多く、法律で強制的に借主を保護することは適当ではないため、借地権には含まれていません。  

借地権は、設定された時期によって大きく2つに分けることができます。 

旧法借地権  旧借地法が適用される借地権
平成4年8月1日より前に設定されたもの 
借地借家法上の借地権  借地借家法が適用される借地権
平成4年8月1日以降に設定されたもの 

(スマホでは右にスクロールできます)

それ以外にも、下の図にあるように細かい分類がされていますが、どの借地権であっても、相続の手続きに大きな差はありません。 

借地権の種類

なお、借地権が設定されている土地のことを、一般に「底地」と呼んでいます。

底地権と借地権の違い

借地に関する相続しては、㋐借主が死亡した場合と㋑地主が死亡した場合とが考えられますが、本稿では㋐のついて解説をしていきます。

関連記事:借地権付き土地(底地・貸宅地)を相続した場合の手続きについて解説

借地権を相続した場合は名義変更料は不要

住まいにかかる費用

借地権を第三者に譲渡するときには、原則として地主の承諾が必要です。 

そして、法律には特に規定はありませんが、承諾してもらうために、借地権価格の10%程度の譲渡承諾料を支払うことが一般的です。  

借地権は財産権の一種ですので、借主の死亡によって終了するという契約内容でない限りは、被相続人の遺産として相続の対象となります。  

相続によって借地権が承継された場合には、地主の承諾は不要ですし、譲渡承諾料(名義変更料)を支払う必要もありません。 

借主が自らの意思で他人に渡す場合とは違い、相続は被相続人の地位を相続人がそのまま引き継ぐため、「譲渡」と扱うことはできないからです。  

ただし、地主との良好な関係を維持するため、相続が発生したことを伝えるなどの配慮は必要と思われます。 

賃料支払い債務を相続

相続人は、建物所有権や借地権などの権利だけでなく、賃料を支払う債務も承継します。  

通常は建物や借地権を取得した相続人が負担しますが、他の人が支払うと決めることも問題ありません。 

ただし、相続人間の取り決めは内部的なものですので、債権者である地主との関係では、賃料支払債務は各相続人が法定相続分に応じて分割承継するのが原則です。 

例えば上の図で、CDE間でCが賃料を支払うという合意があったとしても、Aが承諾するまでは、Aは3名全員に対して支払いを求めることが可能です(㋐)。 

仮にDが請求に応じて支払ったときは、CDE間の合意に基づき、DはCに対してその金額分を払うよう求めることができます(㋑)。 

相続した借地権を売却するにはどうすればいい?

サラリーマンとmust

借地権付き建物を売却することも可能ですが、売買による所有権移転登記の前提として、相続登記を申請しなければなりません。  

土地について借地権の登記がされている場合には、こちらの移転登記手続きも必要になります。  

建物の売却に伴い借地権も買主に移転しますが、これは地主の承諾が必要な「譲渡」にあたりますので、譲渡承諾料の支払いもしなければなりません。 

借地権付き建物を相続した場合の相続登記

遺言書と不動産権利書

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借地権が設定された場合には、その旨を登記することができます。  

登記がされることにより、自分が借地権を持っていることを、当事者以外の第三者に対して主張できる(対抗力が得られる)ようになります。 

ただし、借地の場合には、土地上に所有する建物について、自分の名義で表題登記または所有権保存登記を経た場合にも、借地権を対抗することができます。 

こちらのほうが簡単に手続きすることができるため、実際には、借地権の登記がされるケースは多くはありません。 

借地権の対抗要件

借地権付き建物を相続した場合に必要な登記手続きは、借地権の登記がされているかどうかによって違ってきます。 

借地権の登記がされているかどうかは、土地の登記簿謄本を見るとわかります。  

謄本の乙区というところに、賃借権者または地上権者として被相続人の名前が記載されていれば、登記がされています。 

借地権の登記簿記載例

借地権の登記がされている場合には、建物だけでなく、土地についても登記手続きを行う必要があります。 

  土地についての登記  建物についての登記 
借地権の登記あり     
借地権の登記なし  ×   

(スマホでは右にスクロールできます)

(〇:登記必要 ×:登記不要) 

相続人が複数いるときは、遺言や遺産分割により、特定の人に借地権を承継させることができます。 

関連記事:遺言書がある場合の相続登記について|必要書類や遺言執行者がいる場合は?

関連記事:やり直し出来る?遺産分割による相続登記(不動産の名義変更)について解説

特に借地権について定めなかった場合でも、建物とその利用権は一緒に処分するのが通常ですので、建物を取得した人が借地権も承継すると考えられます。 

なお、借地権を共有で承継する、建物の所有権と借地権を別々の人に取得させる、といった決め方をすること自体は可能です。 

しかし、権利関係が複雑になったり、借地権を主張することができなくなったりするケースもありますので、あまりお勧めはできません。

土地に対して借地権の登記がされている場合

【事例】
Bは、自宅を建てるため、地主Aから土地を借り、賃借権設定の登記手続きも行った。
その後、Bは借地上に家を建て、自己名義で登記を経た。
③Bが死亡し、相続人Cが建物と借地権を承継した。

借地権付き建物の相続の事例

なお、ここでは借地権が賃借権である例について説明していきますが、地上権の場合であっても、基本的な流れは同じです。 

①借地権設定・登記 

借地権設定登記の事例

Aが所有している土地について、賃借権設定登記がなされます。  

この登記手続は、AとBとが共同して行う必要があります。 

賃借権設定登記において必ず登記されるのは、下の図の青字の部分です。 

そのほか、契約で存続期間、賃料の支払時期、譲渡や転貸を許す旨、土地賃借権の目的が建物所有である旨などが定められた場合には、これらの事項も記録されます。 

(土地の登記簿の例 

賃借権設定登記完了後の登記簿謄本と登記の内容

②建物建築 

借地上に建物建築

建物が新築されたら、所有者であるBの名義で所有権保存登記手続きを行います。

土地については、変更事項がなければ特に登記はされません。 

所有権保存登記完了後の登記簿謄本記載例

土地の賃借権移転登記若しくは地上権移転登記

③相続(借地権) 

借地権者の相続

土地については、BからCへの賃借権を移転する登記を申請します。 

賃借権を設定したとき(①)と異なり、相続を原因として移転する場合には、Cが単独で手続きをすることができます。 

(土地の登記簿の例

賃借権移転登記完了後の登記簿謄本記載例

建物の所有権移転登記

③相続(建物) 

建物の相続手続き

建物については、相続による所有権移転登記手続きを行います。 

こちらもCのみで申請することができます。 

(建物の登記簿の例

建物の相続登記完了後の登記簿謄本記載例

土地に対して借地権の登記がされていない場合

【事例】
①Bは、自宅を建てるため、地主Aから土地を借りた。賃借権設定の登記手続きは行われなかった。
②その後、Bは借地上に家を建て、自己名義で登記を経た。
③Bが死亡し、相続人Cが建物と借地権を承継した。

借地権設定登記がなされていない場合の相続登記手続き

①借地権設定

借地権設定登記の事例

借地権設定の登記手続きがされていないので、土地の登記簿にBの名前は記載されません。 

借地権の登記がなされていない土地の登記簿謄本記載例

②建物建築

借地上に建物建築

先の事例と同じく、建物についてBの名義で所有権保存登記がなされます。 

(建物の登記簿の例 

所有権保存登記完了後の登記簿謄本記載例

建物の所有権移転登記

③相続(建物)

建物の相続手続き

借地権の登記がないので、建物についてのみ申請すれば登記手続きは終わりです。 

(建物の登記簿の例 

建物の相続登記完了後の登記簿謄本記載例

登記申請書

コワーキングスペースで勉強をする女性

③相続(借地権) 

借地権者の相続

(賃借権移転登記の申請書記載例 

賃借権移転の登記申請書記載例

(地上権移転登記の申請書記載例 

地上権移転の登記申請書記載例

※1 登記の目的 

賃借権や地上権は、一つの物件に対していくつも設定される可能性があります。  

どの賃借権・地上権を移転するかを明確にするために、「〇番賃借権移転」のように、登記の目的のところで順位番号を記載します。 

※2 登記の原因 

原因は「相続」、原因日付は被相続人Aの死亡日となります。 

※3 登録免許税 

相続を原因とする賃借権移転登記の登録免許税は、(申請する年度の固定資産評価額)×(0.2%)です。 

③相続(建物) 

建物の相続手続き

(所有権移転登記の申請書記載例

相続による建物の所有権移転登記申請書記載例

※1 登記の目的 

賃借権や地上権とは違い、所有権は一つの不動産に対して一つしか成立しませんので、原則として順位番号を記載する必要はありません。 

※2 登記の原因 

原因は「相続」、原因日付は被相続人Aの死亡日です。 

※3 登録免許税 

相続を原因とする所有権移転登記の登録免許税は、(申請する年度の固定資産評価額)×(0.4%)です。 

賃借権移転登記

相続人が自分で法務局に行って申請をする場合には、申請書に記載する添付書面は登記原因証明情報のみとなります。  

他の人に依頼して手続きをしてもらうときは、代理権限証明情報として委任状も提出する必要があります。

添付書類  内容 
登記原因証明情報  被相続人(B)の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍謄本
相続人(C)の戸籍謄本(抄本)
被相続人(B)の最後の住所を証する住民票の除票、戸籍の附票など
または
法定相続情報一覧図の写し 

(スマホでは右にスクロールできます)

地上権移転登記

必要な書類は、賃借権移転登記の場合と同じです。 

添付書類  内容 
登記原因証明情報  被相続人(B)の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍謄本
相続人(C)の戸籍謄本(抄本)
被相続人(B)の最後の住所を証する住民票の除票、戸籍の附票など
または
法定相続情報一覧図の写し 

(スマホでは右にスクロールできます)

所有権移転登記

所有権移転登記の場合には、新しく登記名義人になる人の住所を証明する書類も必要になります。 

添付書類  内容 
登記原因証明情報  被相続人(B)の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍謄本
相続人(C)の戸籍謄本(抄本)
被相続人(B)の最後の住所を証する住民票の除票、戸籍の附票など
または
法定相続情報一覧図の写し 
住所証明情報  相続人(C)の住民票、戸籍の附票、印鑑証明書など 

(スマホでは右にスクロールできます)

借地権の相続相談は誰にすればいい?

六法全書

借地権は登記がされないことも多いため、借地契約の内容を相続人が把握していないケースも少なくありません。  

相続時の対応次第では、他の相続人や地主との間でトラブルが起こってしてしまう可能性もあります。 

いずれにせよ登記手続きは必要になりますので、まずは司法書士や弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。 

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この記事の執筆者

司法書士 行政書士 樋口亨
司法書士 行政書士 樋口亨
東京司法書士会所属 登録番号7208号
東京都行政書士会所属 登録番号第19082417号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、遺産相続、不動産登記手続き、不動産に関する紛争の解決(立ち退き、賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

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