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司法書士法人・行政書士事務所リーガル・ソリューションは、東京都新宿区にある司法書士・行政書士事務所です。

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借地権付き土地(底地・貸宅地)を相続した場合の手続きについて解説

更新日:2022-08-03
借地権が設定されている土地を相続した場合の手続きについて詳しく知りたい
底地を相続したけれどトラブルにならないようきちんと手続きしたい

この記事はそのような方向けに書いています。  

こんにちは、司法書士の樋口です。 

私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、相続、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。 

借地権の負担のついた土地いわゆる底地を相続した場合、土地所有権と底地権の二つの側面から検討する必要があります。

土地所有権については、相続による所有権移転登記、底地権については賃料の振込先変更通知を、それぞれ最低限行った方がいいでしょう。

この記事では底地権の概要と、具体的に底地を相続した場合の手続きについて図解を交えて解説しています。

底地を相続した方の参考になるかと思いますので、よろしければ最後までご覧ください。

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底地とは

住宅模型とぼかし背景

底地とは、建物の所有を目的とした地上権または賃借権が設定されている土地のことで、「貸宅地」と呼ばれることもあります。

よく見られるのは、地主が土地を貸し、そこに借地人が家を建てて住むというケースです。

底地の概要を説明した図解

一般的な借地契約では、地主は土地を使用収益させる義務を、借地人は賃料(地代)を支払う義務を、それぞれ相手方に対して負っています。

地主が賃料などの金銭を受け取ることができる権利を「底地権」、借地人が底地を使うことができる権利を「借地権」といいます。

底地権と借地権の説明

なお、土地を指す言い方として、底地のほかに「更地」「貸家建付地」などもあります。

更地は、建物が何も建っておらず、借地権も設定されていない土地です。

土地の所有者が自分で使用している場合や、駐車場・資材置き場として有償で貸している場合などがあります。

貸家建付地は、土地の所有者が戸建てやアパートを建て、他の人に貸している場合の土地を指します。

底地の場合は借地人が建物を建てて所有しますが、貸家建付地では貸主が建物所有者になります。

自分で使うための土地と他人に貸している土地

底地を相続する場合の注意点

ビジネスマンの手の平と注意マーク

底地権者が亡くなった場合の相続については、①土地所有権の承継と、②底地権の承継との2つの場面に分けて考える必要があります。

①土地所有権 相続人に承継される
②底地権 貸主の死亡により終了するという契約内容になっている
→相続人に承継されない
貸主の死亡により終了するという契約内容ではない
→相続人に承継される

(スマホでは右にスクロールできます)

貸主の死亡後も借地契約関係が続く場合には、通常、新たに土地の名義人となった相続人が底地権も引き継ぐことになります。

相続人は、賃料などの金銭を借地人から受け取ることができますが、一方で、土地を使用収益させる義務も承継します。

そのため、底地を相続しようとする際には、借地人との契約内容や、底地を所有することのメリット・デメリットを把握しておくことが大切です。

メリット ・更地に比べ、固定資産税が安くなる
・定期的な収入を得ることができる
・アパートの経営と比べ、管理費や維持費があまりかからない
デメリット ・相続時に税金がかかる可能性がある
・収益性が低い
・売却したり、担保に入れたりすることが難しい
・借地人とのトラブルが生じる可能性がある

(スマホでは右にスクロールできます)

ここからは、特に注意すべき点について、㋐遺産の内容の確認、㋑相続税がかかるかの確認という2つの視点から解説していきます。

被相続人の遺産を確認

まずは、遺産の中に底地がないかを確認します。

被相続人が不動産を所有していたかどうかは、登記簿謄本、課税明細書、権利証などを見れば、ある程度は把握することができます。

しかし、被相続人が土地の所有者だとわかったとしても、底地権者であったかどうかは、容易に判明しないことも少なくありません。

登記簿の乙区の欄に、建物所有を目的とする賃借権や地上権の登記が入っていれば、その土地が底地であると判断できます。

底地の登記簿例

しかし、実際には、底地であっても借地権の登記はされていないというケースのほうが多いです。

そもそも登記をするのは、自分がその不動産に関して権利を持っていることを、当事者以外の第三者に対して主張する(対抗力を得る)ためです。

権利の登記は基本的には義務ではありませんが、特に所有権については、対抗力を得られないと困る場面が多いため、登記手続きをすることが一般的です。

他方、借地権に関しては、借主を守るため、より簡単に権利を対抗することができる方法が用意されており、こちらを利用する人のほうが多いです。

底地権の形態

関連記事:借地権付き建物を相続した場合の手続き|名義変更料は必要?

当時の契約書があればいいのですが、契約書を紛失していたり、契約書を交わしていなかったりすることも少なくありません。

相続人が契約の内容を知ることができないと、地代や更新料などをめぐって借地人との間で争いが起こる可能性が高まってしまいます。

トラブルに巻き込まれることを避けるため、相続放棄を検討される方もいらっしゃるようですが、底地以外の遺産も引き継ぐことができなくなりますので、注意が必要です。

なお、本稿執筆時点では、相続放棄が認められたとしても、他の人に遺産の管理を引き継ぐことができるようになるまでの間は、管理を続けなければなりません。

もし放棄をすることによって誰も相続人がいないという状態になってしまう場合には、裁判所に対し、相続財産管理人の選任を申し立てる等の対応が必要です。

令和5年4月1日以降は、法改正や新法施行により、相続放棄をした人の負担は軽減される見通しです。

相続税がかかるか確認

相続や遺贈によって取得した財産が一定額(基礎控除額)を超える場合には、相続税が課されます。

㋐課税価格の総額
大まかに言うと、(プラスの財産:不動産、預貯金など)-(マイナスの財産:借金、葬儀費用など)
㋑基礎控除額(平成27年1月1日以降に相続が開始した場合)
(3,000万円)+(600万円)×(法定相続人の数)
㋐よりも㋑のほうが多いとき
→相続税は課税されず、税務署への申告も不要
㋐よりも㋑のほうが少ないとき
→相続の開始を知った日から10か月の期限内に、相続税の申告と、相続税の納付が必要

関連記事:放置してもかかる?相続登記(不動産の名義変更)と相続税について解説

㋐課税価格の総額を計算する際には、底地はプラスの財産として評価されます。

しかし、得られる賃料収入よりも、相続税や固定資産税のほうが額が多く、実際には赤字となってしまうケースも少なくありません。

いったん相続をしてから売却することも考えられますが、底地は所有者が自由に使えないため、買い手を見つけるのが難しいです。

底地を売却する方法として考えられるのは、次の3つが挙げられます。

㋐借地人に売る
㋑地主と借地人が協力し、第三者に売る
㋒底地の買取りを専門的に行っている業者に売る

メリット デメリット
土地を自由に使えるようになり、借地人にとって利益になるため、買い取ってもらいやすい 借地人に購入の意思がない場合には、他の方法で売却するしかない
買主は土地と建物の所有権を一緒に取得できるため、買い取ってもらいやすい 貸主と借地人とで、売却のタイミングを合わせなければならない
早く売却することができる 売却価格が低く、通常の1~2割程度

(スマホでは右にスクロールできます)

底地を相続した場合の手続き

白い紙を挟んだクリップボードとボールペン

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【事例】
①AB間で、建物所有を目的とした土地賃貸借契約が交わされた。
②Bは借地上に家を建て、居住していた。
③Aが死亡した。Aの相続人として、子CDEの3名がいる。CDEの間で遺産分割協議が行われ、Cが土地と底地権を取得することになった。

底地権を相続した場合の事例

Cが行うべき手続きは多々ありますが、ここでは次の3つについて解説していきます。

㋐土地の相続登記
㋑借地人に対し賃料振込先の変更を通知
㋒相続税がかかる場合には相続税の申告

土地の相続登記

相続登記を申請する場合の流れ

まずは、AからCへの所有権移転登記を申請し、登記簿の名義を書き換えます。

登記を申請する際の主な添付書類は、次のとおりです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・原戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本(抄本)
  • 被相続人の最後の住所を証する除票、戸籍附票など
  • 遺産分割協議書

遺産分割協議書への記載のしかたは特に決まっていませんが、誰がどの財産を取得するのかが明確になっている必要があります。

ただし、土地の所有権と底地権は一体となって承継されますので、あえて「Cは、底地権を取得する」などと書かなくても問題ありません。

(遺産分割協議書の記載例)

底地が遺産にある場合の遺産分割協議書記載例

遺産の取得者は一人でなくてもよく、例えばCDE全員の共有とすることも可能です。

しかし、底地に関しては、権利関係が複雑になり、トラブルが生じやすくなる恐れがありますので、共有での承継はあまりお勧めできません。

(手続き完了後の登記簿)

手続き完了後の登記簿謄本記載例

相続登記の全体について詳しく知りたい方は『相続登記とは?亡くなった人の不動産の名義変更について法改正点も含め解説』をご覧ください。

借地人に対し地代の振り込み先変更通知

オーナーチェンジと振込先の変更

遺産分割の効果は相続開始時に遡って生じますので、Cは、Aの死亡時から底地権者であったことになります。

ただし、Aの死亡後に発生した賃料をBに請求するためには、㋐土地の相続登記を済ませていなければなりません。

なお、理論上は、被相続人の死亡後、遺産分割が成立するまでの間に発生した賃料については、相続人それぞれが相続分に応じて請求することができます。

一般的には、遺産分割協議の中で、上記の賃料についても底地権取得者が承継するという合意がなされることが多いです。

底地を相続した場合の賃料の帰属先

(遺産分割協議書の記載例)

賃料を加味した遺産分割協議書記載例

AB間の契約内容は、そのままCB間の契約として引き継がれます。

これによってBが何か不利益を被るわけではありませんので、Cには、貸主が相続により変わったことをBに知らせる法的な義務はありません。

しかし、今まで使っていたAの口座は死亡に伴って凍結されますので、賃料の受け渡しをすることができなくなります。

借地人が貸主の死亡を把握できないケースも少なくありませんので、無用のトラブルを避けるためにも、貸主が変わったことを書面で通知するといいでしょう。

通知書の書式は特に決まっていませんが、新たな貸主の連絡先や今後の賃料の振込先などを記載するのが一般的です。

(通知書の例)

底地を相続した場合の賃貸人変更通知

相続税がかかる場合には相続税の申告

底地の相続と相続税の申告

先ほども触れましたが、㋐課税価格の総額のほうが㋑基礎控除額よりも多い場合には、相続税の申告と納付が必要です。

㋐課税価格の総額

(プラスの財産:不動産、預貯金など)-(マイナスの財産:借金、葬儀費用など)

㋑基礎控除額(平成27年1月1日以降に相続が開始した場合)

(3,000万円)+(600万円)×(法定相続人の数)

ただし、底地については、小規模宅地の特例という制度の適用を受けることができる可能性があります。

小規模宅地の特例とは、一定の条件を満たした土地については、一定額を相続税の課税価格から控除することができるというものです。

評価額を最大で80%減額することができるため、課税価格が大幅に減り、場合によっては相続税がかからなくなる可能性があります。

底地と小規模宅地の特例

この特例の適用を受けられるかどうかは、土地がどのように利用されていたか、誰が不動産を取得したかなどによって変わってきます。

細かく複雑に条件が分かれており、慣れていない方が判断するのは難しいと思われますので、税理士や税務署に相談されることをお勧めします。

底地の相談は誰にする?

悩みは相談を!

底地の相続については、考慮すべき事項が多いため、専門家に相談されたほうがスムーズに手続きが進められます。

不動産の相続手続きの専門家は司法書士ですので、まずは司法書士に相談し、相続税の申告や納付が必要であれば税理士にも相談するといいでしょう。

司法書士が税理士と提携していることも多々ありますので、不動産登記を依頼した司法書士に税理士を紹介してもらうのも良いかと思います。

いずれによせ借家人の振込先が変わることにはなるので、早めに専門家に相談しましょう。

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この記事の執筆者

司法書士 行政書士 樋口亨
司法書士 行政書士 樋口亨
東京司法書士会所属 登録番号7208号
東京都行政書士会所属 登録番号第19082417号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、遺産相続、不動産登記手続き、不動産に関する紛争の解決(立ち退き、賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

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